はじめに

一人親方の多くの方々が、自身の経験とスキルを活かし、自由な働き方を追求しています。
しかし、自由な働き方をするということは、責任も自分で負うということ。
特に、安全と健康に対する管理責任も自分で行わなければなりません。
特に労働安全衛生法においては、一人親方自身が注意点を理解し、適切な対策をとることは、長期的にみても、安全で持続可能な事業の運営を支える鍵となります。

この記事では、令和6年4月に改正された労働安全衛生法に基づく、一人親方の義務並びに、日常作業において注意すべきポイントについて解説しています。
これら情報は、一人親方として働く上で、不可欠なものですのでぜひ参考にしてみてください。

労働安全衛生法の概要

スーツ姿説明

労働安全衛生法は、労働における労働者の安全と健康を確保するために作られ、定められた法律です。
通常この法律は、従業員を雇用している事業者に適用されますが、近年の法改正や、時代とともに変化する社会的な要請により、一人親方にも適用されるようになってきました。
一人親方とは、従業員を雇用せず、自らの労力を依頼主に提供する個人事業主のことを指します。
特に、建設業などは、危険が伴う作業が多く、一人親方であっても安全管理の必要性は高まっています。
業務を要因とした労働災害や健康リスクに対し、適切な対策を講じないと、重大な事故や健康被害に直面する可能性が高いと言えるでしょう。

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、労働者や作業員の安全を確保するために必要な配慮をする義務のことを指します。
労働基準法や安全衛生法などの法律で規定されていますが、一人親方にもこの義務は適用されます。
一人親方は、雇用主であり労働者でもあるため、自分自身に対して安全配慮義務を果たす必要があります。

なぜ安全配慮義務が必要か?

一人親方は、業務中に起こり得るリスクを自分自身で管理しなければなりません。
事故が発生した場合、自分が直接的な被害を受けるだけでなく、業務の継続が難しくなる可能性もあります。
また、契約先や協力会社に対しても安全管理が徹底されていないと、信用を失い、仕事を依頼されなくなるリスクがあります。
そのため、仕事に対する危険性を把握し、日常的な生活においても適切な対策を講じることが求められます。

安全配慮義務を怠ると

一人親方として働くことは、個人事業主としての「自由と自己責任」が求められます。
個人事業主だからといって、安全に対する配慮を怠ってよいというわけではありません。
業務災害リスクの高い建設業などは「安全配慮義務」が非常に重要となりました。

業務災害発生時のリスク

  • 入院費用や治療費などによる経済的なリスク
  • 仕事ができない状態の間の経済的なリスク
  • 経済的不安によるストレス過多のリスク
  • 法的措置による経済的時間的ロスのリスク

業務災害発生時の元請け側のリスク

  • 管轄の労働基準監督署の工事停止命令リスク
  • 災害原因がわかるまで工事再開できないリスク
  • 竣工遅れによる赤字工事となりえるリスク
  • 法的措置による経済的時間的ロスのリスク
就労不能図

事業を自ら行う一人親方や個人事業主たちは、雇用されている方と違い、自分で自分を守る努力が必須であり、それを怠ると、自分だけではなく、仕事仲間や家族、しいては元請け企業まで迷惑がかかる場合があります。
リスクを考え、業務災害等が起こらないよう、安全配慮義務を順守していきましょう。

業務災害時の責任所在は常に依頼主側主体となる

建設業請負安全配慮義務

本人はもちろんのこと、基本的に、仕事を依頼した方主体で責任が生じます。
例えば、一人親方が自分の仕事仲間に仕事を依頼した場合もです。
上の図のように、全衛生法並びに安全配慮義務は、すべての依頼主がその義務を負うわけです。
いくら仲が良い仲間同士であっても、安全に対し十分注意していきましょう。

労働安全衛生法改正で一人親方が注意すべきポイント

一人親方が、労働安全衛生法において注意すべき点はいくつかあります。
ぜひ日々の業務に活かしていただき、リスクを最小限に抑え、安全で健康的な働き方を実現していきましょう。

労働安全衛生法と安全配慮義務を守ることは

自分を守るということは

安全に仕事ができる状態を維持していきましょう。

1 安全装備の適切な装着と使用

安全装備の装着や使用は、一最初に注意すべきポイントです。
労働安全衛生法では、特定の作業において安全装備の使用が義務付けられています。
もちろん一人親方も例外ではありません。
例えば、以下の装備が該当します。

安全帽
特に高所作業や重機が関わる現場では、安全帽(ヘルメット等)を常に着用することが求められます。頭部を保護するために欠かせない安全装備です。

安全帯
作業中に、高所からの転落を防ぐための安全帯は、必ず使用しましょう。作業前にしっかりと装着、固定することが大切です。

保護具
目、耳、手を守るための保護具も、作業内容に応じて適切に使用する必要があります。特に、飛散物が発生する作業や騒音が大きい環境では、保護用ゴーグルや耳栓は必須です。

動きにくくなる、効率が下がるなどのお声は聞いておりますが、労働安全衛生法を遵守する義務があります。
安全装備を適切に使用しましょう。
装備し使用することにより、作業中の事故や怪我を最小限に防ぐことができます。
日常的に装備の点検を行い、必要に応じて交換や修理を行うことも忘れずに行いましょう。

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2 健康管理の重要性

一人親方は、基本全てを自分で管理するため、健康管理に対する意識も高く持つ必要があります。
特に過酷な労働環境で作業する場合や、長時間労働が続く場合には、以下の点に注意しましょう。

定期健康診断の受診
一人親方においても、定期的に健康診断を受けることが推奨されています。
生活習慣病や過労による健康リスクを早期に発見し、対策を講じていきましょう。

十分な休養の確保:
長時間の労働や、過密なスケジュールは、体力を消耗させるだけではありません。精神的なストレスも増加させ、ストレス回復には時間を要する場合も否めません。
常に適切な休養と睡眠を確保し、定期的にリフレッシュする場所と時間(リラックスタイム)を作ることが大変重要です。

健康管理には、自らの働き方を見直し、持続可能なペースで業務を行うための基盤となるものです。
特に繁忙期やストレスの多い時期は、自ら意識的に健康状態をチェックし、必要な対策を講じるよう心がけましょう。

3 作業環境の整備

一人親方は、自らの作業環境を自ら整える責任があります。
安全で効率的に作業を行うためには、作業環境の整備が欠かせません。
以下の点に注意して作業環境を整備しましょう。

作業スペースの整理整頓
作業場所が整理整頓されていることは、安全に作業することに直結します。道具類や材料等は、使いやすい場所に保管し、不要な物は速やかに片付けるようにしましょう。

安全な電気配線
電動工具類、照明類などの電源が安全に配線されているか確認し、感電や火災のリスクを減らすようにしましょう。

また、周囲の安全確認や危険物の除去などを徹底することで、リスクをさらに減らすことが可能です。

4 リスクアセスメントの実施

リスクアセスメントとは、作業を行う前に、そこにあるリスクを考え評価し、必要な対策を講じるプロセスのことです。
一人親方として業務を行うには、自らが行う作業に対し、どのようなリスクが存在するのかを常に把握し、適切な対応を講じていくことが求められます。

作業前のリスクを評価する
作業や現場での仕事を始める前に、どのような危険が潜んでいるかを考え評価し、必要な対策を打つことが重要です。

危険が伴う作業の慎重な実施
特に危険度が高い作業は、追加の安全措置を検討し再評価して、必要に応じて他の専門家に助言を求めることも考慮しましょう。

リスクアセスメントを通じリスクを事前に把握、適切な対策を講じることで、業務災害の発生を未然に防ぐことが可能です。

5 法令遵守と情報の収集

一人親方も仕事をする以上、労働安全衛生法や、それら関連する規制を遵守することが不可欠です。
最新の法令や規制に関する情報を定期的に収集し、省令改正があった場合は、それに従って行動することが求められます。

定期的な情報更新
労働安全衛生に関する法令や規制は、社会の変化に応じて改正されることがあります。最新の情報を収集し、日々の業務に適用することが重要です。

必要な届出や申請の確認
業務内容や地域によっては、特定の届出や許可が必要な場合があります。これらを確認し、必要な手続きを適切に行いましょう。

法令遵守は、一人親方として業務を行うための「信頼性」を高めるためにも重要です。
わからないことがある場合は、専門家に相談し、適切な対応を行うよう心がけましょう。

6 メンタルヘルスのケア

一人親方や個人事業主は、基本一人で活動しているため、孤立しがちで精神的な負担を受けやすい働き方と言われています。
ですから、自分自身のメンタルヘルスにも十分注意を払い、必要な時にはメンタルケアを行うことが大切です。

  • ストレスの管理
    ストレスを感じた時に、自分自身がリラックスできる時間を作るか、逃げられる場所を作っておく、または専門家(医師やカウンセラーなど)に相談することを検討しましょう。
  • ストレスサポートネットワークの活用
    同業者や専門家とのネットワークを築き、コミュニケーションを図り、メンタルが困難な状況に陥った際にはサポートを求めることが大切です。
相談

事業を行う方は、特に孤独になりがちです。

あまり心に溜めないで、専門家(医師やカウンセラー)に相談しましょう。

相談相手選びで重要なことは

第三者であること

もしくは

仕事と関係性が無い人です。

精神的ストレスが多い現社会では、メンタルヘルス(心の健康)を適切に管理し、対策することが大変重要です。
日本では、メンタルヘルスというと、差別的発言があった時代がありますが、今ではごく普通に普段でも使われています。反対に差別的発言をする方が勉強不足と言えるでしょう。
メンタルヘルス(心の健康)を整えることで、長期的にしかも安定した事業運営が可能になります。

まとめ

一人親方の働き方は、自由であり自分の経験とスキルを駆使して業務を遂行していきます。
自由であるということは、責任も重く、すべて責任は自分にあります。
ですから、日々の高い自己管理能力と、業務に関しては特に安全意識が求められます。

労働安全衛生法に基づく規定をしっかりと理解し、業務においては特に適切な対策を講じ、自らの安全と健康を守っていきましょう。

安全装備使用、健康管理、作業環境整備、リスクアセスメント実施、法令遵守、メンタルヘルスケアなど、意識的に行い、対策も常に講じていきましょう。
そうすることで、自分だけではなく、仕事仲間や家族、パートナーを守り、仕事依頼者である元請企業を守り、安定した事業を継続していきましょう。

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