今回は一人親方の皆さんが「これ労災保険使えるの?」と思った時に、労災保険が使えるかどうかの判断にお役にたてるよう解説していきます。
ただし、判断に迷ったときには、自己で判断せず、ご加入先の団体や所轄の労働基準監督署へ相談するのが良いでしょう。
万が一の事故に備えて、労災保険の活用方法を知っておくことは非常に重要です。
この記事では、労災保険を使用できない時の条件について解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
労災保険で保険が使えない時の条件とは?
労災保険は、仕事中のケガや病気、通勤中のケガや病気に対して給付を行う保険です。
しかし、すべてのケガや病気が労災保険の対象になるわけではありません。
そこで今回は、労災保険で保険が使えない時の条件について解説します。
労災保険で保険が使えない時の条件
労災保険で保険が使えない時の条件は、大きく分けて以下の3つです。
業務との因果関係が認められない
労災保険は、業務とケガや病気の因果関係が認められる場合に給付が行われます。
業務と因果関係が認められない場合は、労災保険の対象外となります。
(因果関係とは、原因とその原因によって生じる結果との関係のこと)
例えば
仕事中にケガをしたが、そのケガが業務と関係のない個人的な恨みによるものであった場合、業務との因果関係が認められず、労災保険の対象外となります。
労働者保険の適用対象者ではない
労災保険は、保険の適用対象者である場合に給付が行われます。
労災保険の適用対象者には、以下の者が含まれます。
- 労働基準法第1条に規定する労働者
- 船員保険法第1条に規定する船員
- 労働者災害補償保険法第5条第1項に規定する特別加入者
例えば
一人親方が仕事中にケガをしたが、「労災保険に加入していなかった場合」労災保険の対象外となります。
労災保険の対象外の業務に従事していた
労災保険は、すべての業務に対して適用されるわけではありません。
労災保険の対象外の業務には、以下のようなものがあります。
- 国または地方公共団体の公務員が行う業務
- 自衛官が行う業務
- 裁判官が行う業務
- 独立行政法人の職員が行う業務
- 労働者災害補償保険法第2条第2項に規定する業務
例えば
公務員が仕事中にケガをした場合、労災保険の対象外となります。
仕事中に蜂に刺された。労災保険を使うには、以下の2つの要件を満たす必要があります
業務遂行性
業務遂行性とは、業務を遂行する中で蜂に刺されたかどうかという要件です。
業務中であれば、業務遂行性が認められる可能性が高いと言えます。
例えば
一人親方の大工工事業の方が、業務で建て方をしている途中に蜂に刺された場合、業務遂行性が認められると考えられます。
業務起因性
業務起因性とは、業務の性質や内容が蜂に刺される原因となったかどうかという要件です。
業務の性質や内容によって、蜂に刺される可能性が高まるような場合は、業務起因性が認められる可能性が高いと言えます。
例えば
一人親方の塗装工事業の方が、業務で外構塗装をしている際に蜂の巣を発見し、その蜂の巣を駆除しないと塗装ができない事により、蜂の巣駆除をしている最中に蜂に刺された場合、業務起因性が認められると考えられます。
反対に、通常の作業をしている最中に、蜂が偶然飛んできて刺されてしまったという時には、業務に内在した危険性が無いと判断され、仕事中であっても危険性が認められず、労災保険が使えない場合もあります。
以上の2つの要件を同時に満たす場合、労災保険が使える可能性があります。
業務遂行性とは?
業務遂行性とは、労災保険における業務上災害の認定基準の一つです。
業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態のことをいいます。
具体的には、以下の場合に業務遂行性が認められると考えられます。
- 業務に従事している場合
- 休憩時間中、事業場内でスポーツをしている場合
- 用便中、更衣中の場合
- 出張や外出作業中の場合
業務遂行性が認められるためには、労働者が事業主の支配下にあることが重要です。
事業主の支配下とは、事業主の指揮命令下にある状態、事業主の管理下にある状態を指します。
一人親方に置き換えると、
事業主≒元請け
労働者≒一人親方や自営業者
つまり、元請けから仕事を依頼され、「工事請負契約書」を取り交わし、業務を遂行する場合ということになります。
ただし、労働者とは違い、一人親方は元請けからの完全なる「支配下」とはなりません。
したがって、上記にある「休憩時間中、事業場内でスポーツをしている場合」や「出張や外出作業中の場合」には当たらない可能性があります。
休憩中は業務時間外となり、また、そもそも外出作業自体の概念もありません。
一般的な労働者との基準では当てはまらない可能性が大きくなります。
例えば
休憩時間中に事業場内でスポーツをしている場合、一人親方は元請け会社の指揮命令下にはないため、業務遂行性が認められない場合があります。
業務遂行性が認められない場合は、業務上災害として労災保険の給付を受けることができません。
業務遂行性の認定基準
業務遂行性の認定基準は、以下のとおりです。
- 一人親方が工事請負契約に基づいて元請け会社のある程度の支配下にある状態であること
- 一人親方が業務に従事している場合、元請け会社のある程度の支配下にある状態であること
- 一人親方が業務に従事していない場合であっても、元請け会社の管理下にある状態であること
一人親方や自営業者においては、一般的な労働者の判断基準と異なる場合があります。
ただし、請負契約をした上で業務遂行を行い、一般常識の範囲内での行動をお願いいたします。
業務起因性とは?
業務起因性とは、労災保険における業務上災害の認定基準の一つです。業務起因性とは、業務がケガや病気の原因となったかどうかという要件です。
業務起因性が認められるためには、業務とケガや病気の間に因果関係があることが必要です。
例えば
一人親方が、脚立から転落したり、作業用機械に巻き込まれてケガをした場合、業務起因性が認められると考えられます。
業務起因性が認められない場合は、業務上災害として労災保険の給付を受けることができません。
業務起因性の認定基準
業務起因性の認定基準は、以下のとおりです。
- 業務とケガや病気の間に因果関係があること
- 業務とケガや病気の間に因果関係を否定する特段の事情がない
業務起因性の認定は、労働基準監督署が行います。
判断に迷った場合は、管轄の労働基準監督署に相談しましょう。
業務起因性の認定事例
業務起因性が認められる事例としては、以下のようなものがあります。
- 業務に従事中にケガをした場合
- 業務の性質や内容によってケガや病気になる可能性が高まった場合
- 業務の遂行に起因してケガや病気になった場合
業務起因性が認められにくい事例としては、以下のようなものがあります。
- 業務に従事していない間にケガをした場合
- 業務の性質や内容とは関係なくケガや病気になった場合
- 業務遂行とは関係なくケガや病気になった場合
業務起因性の認定は、個別具体的な事案ごとに判断されます。
労災保険が使えない場合はどうすればいい?
労災保険が使えない場合は、国民健康保険から給付を受けることができます。
その際には国民健康保険から業務上または通勤中のケガや病気に対しても給付が行われます。
ただし、労災保険よりも補償額が少なくなります。
(国民健康保険は基本的に療養日については3割負担、休業補償給付はありません)
また、労災保険が使えない場合は、自己負担で治療費を支払う必要があります。
労災保険が使える場合の給付
労災保険が使える場合、以下の給付を受けることができます。
- 療養補償給付:治療費の支給
- 休業補償給付:休業中の給料の支給
- 傷病補償給付:後遺障害が残った場合の給付
- 遺族補償給付:死亡した場合の遺族への給付
- その他の給付制度もありますので、管轄の労働基準監督署へ相談してみましょう
労災保険は、労働者の安全と健康を守るための制度です。
特別加入制度は、一人親方や自営業者、個人事業主を仕事を起因としたケガから守るあための制度です。
全国建設業親方労災保険組合
全国建設業親方労災保険組合では、労災申請の書類作成を無料で代行しています。
申請書類は非常に煩雑で、書くことも多いので、ケガや病気で苦しんでいる状態の時にきちんと書き上げるのは難しいもの。
ですから、ほとんどの労災保険取扱団体では、申請書類の作成を代行しています。
けれども有料としていることが多いので「働けないから労災保険の補償を受けるのに、お金を払わなくてはならない」という悪循環に陥ることも。
また、団体としては申請手続きが多少遅れても損害は発生しません。
ですから書類ができるまで数日待たされることもあるようです。
もちろんその日数分、お金が振り込まれる日が遅れます。
一方、全国建設業親方労災保険組合は労災保険の専門家が在中しているので、連絡が入れば即座に対応。
しかも「無料」であなたをサポートします。
万が一に備えるなら、全国建設業親方労災保険組合で安心安全なサポートを受けましょう。
まとめ
労災保険は、仕事中のケガや病気、通勤中のケガや病気に対して給付を行う保険です。しかし、すべてのケガや病気が労災保険の対象になるわけではありません。
労災保険で保険が使えない時の条件を理解しておくことで、万が一の際に適切な対応をとることができます。