「建設業の一人親方労災に加入しているから、仕事中のケガなら何でも補償される」
このように考えている方は、注意が必要です。
近年は、建設業の一人親方として働きながら、空いた日に軽貨物配送をしたり、草刈りや技術講師などの仕事を請け負ったりする方も少なくありません。
しかし、建設業の一人親方として特別加入していても、建設業とは異なる仕事中の事故まで自動的に補償されるわけではありません。
厚生労働省は、特定フリーランス事業と、それ以外の特別加入対象となる事業・作業の両方で労災保険給付を受けたい場合には、それぞれの区分で特別加入するよう案内しています。
この記事では、複数の仕事をしている一人親方が確認しておきたい、労災保険の補償範囲について解説します。

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【結論】建設業の一人親方労災ですべての仕事が補償されるわけではない
建設業の一人親方として特別加入している場合、原則として補償の対象となるのは、建設業の事業・作業のみです。
例えば、次のような働き方をしている場合は注意が必要です。
- 平日は建設現場で働き、休日は軽貨物配送をしている
- 建設業のほかに草刈り作業や産廃処理場での作業を請け負っている
- 建設業の経験を生かして企業向け研修の講師をしている
- 空いている日にアルバイトとして雇われている
これらはすべて「仕事」ですが、労災保険上の取扱いが同じとは限りません。
仕事内容によって、次のように適用される制度が変わる可能性があります。
| 働き方 | 確認する労災保険 |
|---|---|
| 建設業の一人親方 | 建設業の一人親方等の特別加入 |
| 軽貨物配送 | 個人貨物運送業者等の特別加入 |
| ITシステム開発 | ITフリーランスの特別加入 |
| 草刈り・産廃処理・清掃など | 特定フリーランス事業の特別加入 |
| 雇用契約を結んだアルバイト | アルバイト先の労災保険 |
大切なのは、「個人事業主として加入しているか」ではなく、「どの事業・作業について特別加入しているか」を確認することです。
なぜ建設業以外の仕事が補償されないことがあるのか
特別加入には事業・作業ごとの区分がある
労災保険は、本来、事業に使用されて賃金を受け取る労働者を対象とする制度です。
一人親方や個人事業主は、通常の労働者とは異なるため、一定の要件を満たす場合に「特別加入」という仕組みを通じて労災保険へ加入します。
厚生労働省の制度では、建設業の一人親方、個人貨物運送業者、林業の一人親方、ITフリーランスなど、事業や作業ごとに特1から特12まで、12個の区分が設けられています。
そのため、建設業の区分で特別加入したからといって、個人事業主として行うすべての仕事が補償対象になるわけではありません。
厚生労働省の『特別加入制度のしおり』にも、特定フリーランス事業以外の特別加入対象となる仕事をしている場合は、その仕事に対応する特別加入が必要であり、
加入していない事業・作業中に被災しても労災保険給付を受けられないと明記されています。
「建設会社から依頼された仕事」でも建設業とは限らない
判断するときは、誰から仕事を依頼されたかだけでなく、実際にどのような作業をしていたかが重要です。
例えば、建設会社から次の仕事を依頼されたとします。
- 建物の設計
- 建設前の現場調査
- 建設工事
- 竣工前の清掃
- 竣工後の点検・メンテナンス
発注者はすべて建設会社だったとしても、これらがすべて建設業の特別加入で補償されるとは限りません。
例えば、厚生労働省の資料では、足場などを設置せずに行うビルメンテナンスは特定フリーランス事業、
足場などを設置して建設の態様で行う作業は建設業の特別加入という例が示されています。
最終的には、個別の作業態様や業務内容を踏まえて判断されます。
まずはご加入相談から
複数の仕事をする一人親方に多いケース
ケース1|建設業と軽貨物配送をしている
平日は建設現場で働き、休日や夜間に軽貨物配送をしているケースです。
自動車、原動機付自転車または自転車を使用して、有償で貨物を運送する事業は、個人貨物運送業者等の特別加入区分に該当する可能性があります。
厚生労働省の資料では、次のような仕事が個人貨物運送業者等の対象として挙げられています。
- 貨物軽自動車運送事業
- バイク便
- 原動機付自転車による貨物運送
- 自転車による貨物運送
- 自動車や自転車を使用するフードデリバリー
個人貨物運送業は、特定フリーランス事業ではなく、以前から設けられている別の特別加入区分です。建設業と配送業の両方で補償を受けたい場合は、それぞれの加入状況を確認する必要があります。
ケース2|建設業と草刈り・産廃処理場での作業をしている
次のような仕事を企業から業務委託で受けているケースです。
- 土地の草刈り
- 解体現場での作業後の産廃の仕分け
- 建設現場以外でのエアコン・換気扇等の取り付け工事
- 建設資材製造工場での作業
こうした仕事が既存の特別加入区分に該当しない場合は、「特定フリーランス事業」の対象となる可能性があります。
2024年11月1日から、企業等から業務委託を受けるフリーランスについて、業種や職種を問わず特別加入できる制度が始まりました。
ただし、特定フリーランス事業に加入していても、建設工事中の事故が自動的に補償されるわけではありません。建設業と特定フリーランス事業の両方で補償を受けたい場合は、それぞれへの特別加入が必要です。
ケース3|建設業の経験を生かして講師をしている
一人親方としての経験を生かし、次のような仕事を請け負うケースです。
- 安全教育の講師
- 建設業界向けセミナー
- 新人研修
- 技能指導
- オンライン講座の講師
企業などから業務委託を受けて講師を行い、ほかの特別加入区分に該当しない場合は、特定フリーランス事業の対象となる可能性があります。
ただし、「建設業について話しているから、建設業の一人親方労災で補償される」とは限りません。
建設業の知識を使う仕事であっても、実際に行っているのが講師業であれば、建設工事とは異なる事業として判断される可能性があります。
厚生労働省も、講師・インストラクターを特定フリーランス事業で想定される職種の一つとして挙げています。

ケース4|建設業をしながらアルバイトとして働いている
副業先と雇用契約を結び、賃金を受け取って働いている場合は、その勤務先の労災保険が適用されます。
例えば、次のようなケースです。
- 飲食店でアルバイトをしている
- 物流倉庫で短時間勤務をしている
- 建設会社に日雇い労働者として雇われている
- 夜間に警備員として勤務している
労災保険では、正社員、パート、アルバイト、日雇いといった名称にかかわらず、事業に使用され、賃金を受け取る労働者が対象です。
ただし、契約書に「業務委託」と書かれていても、実際の働き方によっては労働者に該当する場合があります。労働者かフリーランスかは、契約の名称だけでなく、指揮命令の有無などの実態を踏まえて総合的に判断されます。
特定フリーランス事業なら、どんな仕事でも補償される?
2024年11月から始まった特定フリーランス事業の特別加入によって、以前より多くの個人事業主が労災保険へ特別加入できるようになりました。
ただし、特定フリーランス事業へ加入すれば、あらゆる副業が補償されるわけではありません。
既存の特別加入区分がある仕事は、そちらで加入する
委託を受けた仕事が、建設業、個人貨物運送業、ITフリーランスなど、すでに存在する別の特別加入区分に該当する場合は、特定フリーランス事業ではなく、その仕事に対応する区分で加入する必要があります。
例えば、次のように分かれます。
- 建設工事を請け負う:建設業の一人親方等
- 軽貨物配送を請け負う:個人貨物運送業者等
- システム開発を請け負う:ITフリーランス
- 講師を請け負う:特定フリーランス事業の可能性
職種名だけでは判断できない場合もあるため、具体的な作業内容を加入団体へ伝えて確認しましょう。
消費者からだけ依頼を受ける仕事は対象外になることがある
特定フリーランス事業では、原則として企業等から業務委託を受ける事業者間の取引が対象です。
企業等から受けている仕事と同種の仕事であれば、一般の消費者から直接受けた仕事についても補償対象となる場合があります。
一方、次のようなケースには注意が必要です。
- 企業からは講師としての仕事を受注している
- 個人客からは、講師としての仕事とは異なる草刈りのみを受注している
この場合、個人客からのみ受注している草刈りは、特定フリーランス事業の対象にならない可能性があります。
厚生労働省は、企業等から受注している事業とは異なる事業について、消費者からのみ委託を受けている場合、その別の事業は特定フリーランス事業の対象にならないと案内しています。
なお、加入時点で企業等から仕事を受けていなくても、今後受ける意向や見込みがある場合は、特別加入できることがあります。
補償漏れを防ぐための5つの確認手順
複数の仕事をしている方は、次の順番で現在の加入状況を確認してみましょう。

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申し込み
お申込みフォームから情報入力
振込・決済
カード情報入力or指定口座へ
お振り込み
加入完了
当団体が加入証を発行し
メールでPDF送付+本証郵送
1.行っている仕事をすべて書き出す
「建設業」「副業」のような大きな分類ではなく、実際の作業を書き出します。
例えば、次のように整理します。
- 足場の組立て
- 内装工事
- 軽貨物配送
- 清掃作業
- 産廃処理
- 建設現場の写真撮影
- 企業向け研修の講師
- 飲食店でのアルバイト
同じ取引先から依頼された仕事でも、作業内容が異なれば、適用される加入区分が変わる可能性があります。
2.雇用か業務委託かを確認する
それぞれの仕事について、次のどちらなのかを確認します。
- 勤務先に雇われ、賃金を受け取っている
- 個人事業主として仕事を請け負っている
アルバイトなどの労働者として働く仕事については、原則として勤務先の労災保険が適用されます。
一方、個人事業主として請け負っている仕事については、特別加入の対象となる事業・作業かを確認する必要があります。
ただし、契約書の名称と実際の働き方が異なる場合もあるため、判断に迷うときは自己判断せず、労働基準監督署などへ相談しましょう。
3.既存の特別加入区分があるか確認する
建設業以外にも、特別加入の区分は複数あります。
代表的なものには、次のような事業・作業があります。
- 個人貨物運送業
- 林業
- 再生資源取扱業
- ITフリーランス
- 芸能関係作業
- アニメーション制作作業
- 介護作業
- 家事支援作業
既存の区分に該当する場合は、原則としてその区分に対応した特別加入団体を通じて手続きを行います。
4.特定フリーランス事業に該当するか確認する
既存の特別加入区分に該当しない場合は、特定フリーランス事業の対象になるかを確認します。
主な確認ポイントは次のとおりです。
- 企業等から業務委託を受けているか
- 今後、企業等から受ける意向や見込みがあるか
- 消費者から受ける仕事は、企業等から受ける仕事と同種か
- 別の特別加入区分に該当する仕事ではないか
「フリーランスだから特定フリーランス事業」と単純に判断するのではなく、先に既存の加入区分を確認することが重要です。
5.現在の加入団体へ具体的な仕事内容を伝える
判断に迷った場合は、仕事の名称だけでなく、次の内容を加入団体へ伝えましょう。
- 誰から仕事を受けているか
- どのような契約を結んでいるか
- 実際に何をしているか
- どこで作業するか
- どのような道具や車両を使うか
- すでに別の特別加入をしているか
特別加入の申請では、業務の具体的な内容や業務歴などを記載します。実際の加入区分も、個別の作業態様や業務内容を踏まえて判断されます。

よくある質問
建設業と別の仕事を月に数回するだけでも確認が必要ですか?
頻度が少なくても、建設業とは異なる仕事である場合は、現在の加入で補償されるか確認しておく必要があります。
月に数回しか行わないことを理由に、その仕事が自動的に建設業の補償対象になるわけではありません。
大切なのは、仕事の回数ではなく、事故が起きたときにどの事業・作業を行っていたかです。
建設業と特定フリーランス事業の両方に加入できますか?
それぞれの対象となる仕事を行っている場合は、両方に特別加入することが想定されています。
厚生労働省も、特定フリーランス事業と、それ以外の特別加入対象となる事業・作業の両方で労災保険給付を受けたい場合は、それぞれに特別加入するよう案内しています。
別の仕事を始めたら、現在の建設業の団体へ申込みすれば補償されますか?
現在の団体へ仕事内容を伝えることは重要ですが、申告するだけで建設業以外の仕事まで補償対象になるとは限りません。
別の加入区分に該当する場合は、その区分に対応した特別加入団体を通じて、別途手続きをする必要があります。
例えば、全国建設業親方労災保険組合では建設業しか入れないので、特定フリーランスとして労災保険に加入するためには、みんなの労災保険組合から申込む必要があります。
事故が起きてから別の特別加入を申し込めますか?
事故が起きた後に新たな加入手続きをしても、事故当時に加入していなかった事業・作業について補償を受けられるわけではありません。
厚生労働省の資料でも、すべての特別加入対象となる仕事について、その事業・作業に特別加入していなければ、労災保険給付を受けられないとされています。新しい仕事を始める段階で、加入状況を確認しておきましょう。
まとめ|仕事が増えたら労災保険の補償範囲も見直そう
建設業の一人親方労災に加入していても、個人事業主として行うすべての仕事が補償されるわけではありません。
今回のポイントをまとめます。
- 特別加入には事業・作業ごとの区分がある
- 建設業以外の仕事は、建設業の特別加入では補償されない可能性がある
- 軽貨物配送やIT関連などには、それぞれ別の加入区分がある
- 既存の区分に該当しない業務委託は、特定フリーランス事業の対象となる可能性がある
- 雇用されて働く場合は、勤務先の労災保険が適用される
- 最終的な判断には、職種名ではなく実際の作業内容や契約形態が重要になる
一人親方として仕事の幅が広がることは、事業を安定させるうえで大きなメリットです。
一方で、仕事が増えても、労災保険の補償範囲が自動的に広がるわけではありません。
「建設業の一人親方労災に入っているから大丈夫」と判断せず、新しい仕事を始めたときは、現在の加入内容と実際の仕事内容が合っているか確認しておきましょう。
なお、個別の事故が労災保険給付の対象になるかどうかは、事故の状況や契約関係、実際の作業内容などを踏まえて判断されます。判断が難しい場合は、現在の加入団体や管轄の労働基準監督署へご相談ください。

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特に、労災事故が発生したら、加入している団体や組合にすみやかに労災事故報告を行いましょう。
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