建設業を取り巻く環境は常に変化しており、法令遵守の重要性はますます高まっています。
特に、下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、元請会社と下請会社、そして一人親方との関係性を円滑に保ち
健全な業界発展を支える上で不可欠な法律です。

しかし、下請法の内容を十分に理解している元請会社は、残念ながらまだ少数派と言わざるを得ません。
また一人親方の中には、下請法自体を知らないという方も少なくありません。

そこで、本記事では建設業の元請会社一人親方双方に向けて、下請法の重要性、違反のリスク、具体的な対策について解説します。

下請法とは:元請会社が知っておくべき基本

下請法とは - 親事業者(元請け会社や依頼人)が
        下請事業者(下請け会社や一人親方・自営業者)に対して
        不当な扱いをすることを防ぎ、下請事業者の利益を保護するために制定された法律

建設業においては、元請会社が親事業者、下請会社や一人親方が下請事業者に該当します。

下請法では、元請会社に対して、以下の義務が定められています。

  • 下請代金の支払遅延の禁止: 下請代金を支払期日までに支払うこと
  • 下請代金の減額の禁止:正当な理由なく下請代金を減額しないこと
  • 不当な返品の禁止:不当な理由で下請品を返品しないこと
  • その他:買いたたき、支払遅延利息の不払い、不当な廉価買い叩きなど、下請事業者に不利益を与える行為の禁止

これらの義務に違反した場合、公正取引委員会から勧告や命令を受け、罰則が科せられる可能性があります。

下請け法と労働者安全確保との関係性

下請法は、あくまで下請事業者の経済的な利益を保護するための法律であり、労働者の安全確保まで直接的に責任を負うものではありません
ただし、下請法を遵守することで、労働者の安全確保につながり、双方にとってより安全に業務遂行が可能になることは言うまでもありません。
さらに労働者の安全確保のためには、労働安全衛生法などの関連法令も併せて遵守する必要があります。

下請法が労働者の安全確保につながる可能性

  • 適正な工期の設定:下請法では、親事業者は下請事業者に対して、適正な工期を設定することが求められています。
    無理な工期は、下請事業者の労働者に過重労働を強いる原因となり、労働災害のリスクを高める可能性があります。
    つまり適正な工期を設定することで、労働者の安全確保につながる可能性があるということです。
  • 適切な下請代金の支払い:下請法では、親事業者は下請事業者に対して、適切な下請代金を支払うことが求められています。
    適切な下請代金の支払いは、下請事業者の経営を安定させ、労働者の賃金や労働条件の改善につながる可能性があります。
    これにより、下請事業者は、安全対策に十分な費用をかけることができるようになり、労働者の安全確保に貢献する可能性があります。

労働者の安全確保に関する法令

労働者の安全と健康を確保するために定められた法令と言えば、労働安全衛生法が挙げられます。
どちらも下請けや直接現場に携わる労働者を守るための法令ですので双方を理解し対策をとる必要があります。
これについては以下記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

下請法違反のリスク:元請会社と一人親方への影響

下請法違反は元請会社だけでなく、一人親方にも大きな影響を与えます。

元請会社へのリスク

  • 社会的信用失墜:下請法違反が発覚した場合、企業の社会的信用が失墜し、取引先からの信頼を失う可能性があります。
  • 行政処分:公正取引委員会からの勧告や命令、罰則を受ける可能性があります。
  • 訴訟リスク:下請事業者から損害賠償請求訴訟を起こされる可能性があります。

一人親方へのリスク

  • 賃金未払い:下請代金の支払いが遅延したり、減額されたりする可能性があります。
  • 不当な扱い:元請会社から不当な扱いを受け、仕事の継続が困難になる可能性があります。
  • 安全確保の遅れ:適切な下請代金が支払われない場合、安全対策に必要な費用を捻出できず、労働災害のリスクが高まる可能性があります。
  • 業務への支障:親事業者の指定の製品、原材料を強制的に使用させられることで、業務へ支障をきたす可能性があります

下請法違反を防ぐために:元請会社が取るべき対策

下請法違反を防ぐためには、元請会社が以下の対策を講じることが重要です。

  • 下請法に関する研修:役員や従業員に対して、下請法に関する研修を実施し、法令遵守意識を高める。
  • 下請契約書の作成:下請契約書を明確に作成し、下請代金や支払条件、返品条件などを明記する。
  • 下請代金の適正な支払い:下請代金を支払期日までに、適正な金額で支払う。
  • 下請事業者とのコミュニケーション:下請事業者とのコミュニケーションを密にし、問題が発生した場合は早期に対応する。
  • 内部統制システムの構築:下請法遵守のための内部統制システムを構築し、定期的にチェックを行う。

一人親方として知っておくべきこと

一人親方も、下請法に関する知識を持ち、自身の権利を守ることが重要です。

  • 下請契約書の確認:下請契約書の内容を十分に確認し、不明な点があれば元請会社に確認する。
  • 下請代金の請求:下請代金が支払われない場合は、速やかに元請会社に請求する。
  • 相談窓口の利用:下請法違反の疑いがある場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談する。
下請法違反と感じたら…?

公正取引委員会では相談した下請事業者が
特定されないように徹底していますので安心して相談できます。

まとめ

下請法は、元請会社と下請会社、そして一人親方の関係性を円滑に保ち、健全な業界発展を支える上で重要な法律です。

元請会社は下請法を遵守し、下請事業者や一人親方に対して適切な対応を行う必要があります。

一方で、一人親方も下請法に関する知識を持ち、自身の権利を守ることが重要です。

元請会社と一人親方が互いを尊重し、協力し合うことで、建設業界全体の発展に貢献できるはずです。

この記事は、建設業の元請会社と一人親方の双方に向けて、下請法の重要性、違反のリスク、具体的な対策について解説しました。
下請法を遵守し、健全な取引関係を築くことで、建設業界全体の発展に貢献できるはずです。

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